交通事故が発生した場合、加害者と被害者の双方に過失が認められるケースがあります。このとき、双方の責任割合を示すのが「過失割合」です。過失割合に基づいて損害賠償額が調整されるため、適切な算定が重要です。
本記事では、過失割合の算定方法と法的根拠について解説します。
このページの目次
過失割合とは
過失割合の定義
過失割合とは、交通事故において、事故発生の責任(過失)が当事者間でどの程度あるかを示す割合です。加害者と被害者の双方の過失を数値化し、損害賠償額を調整する基準として用いられます。
過失割合の基本構造
- 100:0:完全に一方の責任(例:停止中の車両に追突)。
- 80:20:双方に責任がある(例:交差点での一時停止違反と優先道路車両のスピード超過)。
過失割合の算定方法
基本的な流れ
過失割合は、交通事故の状況や各当事者の過失行為をもとに算定されます。
過去の裁判例や基準を参考に、事故類型に応じた基本的な割合を設定。
道路状況や速度、大回りなど、事故の具体的な状況に応じて修正。
基本過失割合の基準
実務では過失割合を算定する際に、過去の裁判例を基に作成された「過失割合の基準表」を参考にします。この基準表は、裁判例をもとに交通事故の典型的な事例ごとの過失割合をまとめたものです。
主な事故類型と基本過失割合の例
- 交差点事故
信号機のある交差点:直進車 vs 右折車 → 20:80(直進車が優先)(双方共に青信号の場合)
一時停止無視:優先道路車 vs 一時停止違反車 → 20:80(優先道路車が優位) - 追突事故
追突車 vs 被追突車 → 100:0(追突車に100%の責任) - 横断歩行者との事故
横断歩行者 vs 車両 → 0:100(横断歩行者が優位)(双方青信号の場合)
修正要素
基本過失割合に加え、事故の詳細な状況に応じて修正要素が適用されます。これにより、過失割合が増減されることがあります。
主な修正要素
- 速度超過:速度が著しく高い場合、加害者側の過失が増加。
- 信号無視:信号無視の程度や状況に応じて調整。
- 歩行者の注意義務違反:スマートフォンの使用など、歩行者側に注意義務違反がある場合、過失が増加。
修正例
信号機のある交差点での右折車 vs 直進車の事故(基本過失割合80:20)(双方青信号)の場合:直進車が30km/h以上のスピード違反 → 60:40に修正。
過失割合の法的根拠
1. 民法の規定
過失割合は、主に以下の民法の規定に基づいています。
過失相殺(民法第722条第2項)
被害者にも過失があった場合、その過失の程度に応じて損害賠償額が減額される。
この規定により、被害者に一定の過失が認められる場合、賠償額が調整されます。
信義則(民法第1条第2項)
当事者は信義に従い誠実に行動しなければならない。
信義則の原則に基づき、過失割合が公平に算定されることが求められます。
2. 過去の判例
日本の交通事故における過失割合は、裁判所が過去に下した裁判例をもとに形成された基準表を参考にしています。これにより、典型的な事故類型ごとに過失割合が具体的に示されています。
過失割合が争われる場合の対応
1. 交渉で解決を試みる
保険会社や加害者側と過失割合を巡って意見が異なる場合、交渉により合意を目指します。
交渉のポイント
- 具体的な根拠を提示
事故現場の写真、警察の事故証明書、ドライブレコーダー映像を活用。 - 判例や基準を引用
基準表や過去の判例をもとに、主張を裏付ける。
2. 弁護士の活用
交渉が難航する場合、弁護士に依頼することで、法律や判例に基づいた適切な主張が可能です。
弁護士が提供するサポート
- 過失割合の根拠資料の収集と分析。
- 判例や基準に基づく交渉代理。
- 裁判手続きの代理。
3. 裁判で争う
過失割合に関する合意が得られない場合、裁判での解決を目指します。
裁判の流れ
過失割合の適正化を求める訴えを提起。
事故現場の写真や目撃証言を提出。
裁判所が適正な過失割合を判断。
過失割合の注意点
1. 過失割合が100:0になるケースは稀
完全に一方に責任がある場合を除き、被害者にも注意義務が問われることがあります。
2. 保険会社の提案に注意
保険会社が提示する過失割合は必ずしも公平でない場合があるため、慎重に検討する必要があります。
3. ドライブレコーダーの活用
事故状況を客観的に示す証拠として、ドライブレコーダーの映像が有効です。
当事務所のサポート内容
当事務所では、交通事故の過失割合を巡る問題解決に向けて、以下のサポートを提供しています。
提供サービス
- 過失割合の算定とアドバイス:基準表や判例を基に、適正な過失割合を提示します。
- 保険会社との交渉代理:保険会社との交渉を代行し、被害者の利益を守ります。
- 裁判手続きの代理:過失割合が争点となる裁判の全面的なサポートを行います。