離婚時に未成年の子どもがいる場合、どちらが親権を持つかを決める必要があります。法改正により共同親権制度が定められましたが施行までは親権者をどちらか一方に定める必要があります。
親権は、子どもの生活や教育、財産管理など、将来を左右する重要な権利であり、夫婦間で争いになることも少なくありません。親権を争う際には、家庭裁判所が子どもの利益を最優先に判断する基準を理解し、適切な主張と準備が必要です。
本記事では、親権の争い方や裁判所が親権者を決定する際の判断基準について解説します。
このページの目次
親権とは?
親権は、未成年の子どもに対して親が行使する権利・義務の総称です。
親権の内容
- 身上監護権
子どもの生活、教育、医療など日常的な面倒を見る権利。
・例:居住地の決定、学校の選定、医療行為の同意など。 - 財産管理権
子どもの財産を管理・処分する権利。
・例:子どもの預貯金の管理、不動産の売買など。
親権の種類
- 単独親権:離婚後はどちらか一方が親権者となる。令和6年に民法が改正され共同親権制度が認められました。令和8年5月までに施行された後は共同親権とすることも可能となります。
- 監護権の分離:親権と監護権を分け、一方が親権、他方が監護権を持つケースもあります。
親権の争い方
親権を決める方法には以下のような手続きがあります。
1. 話し合い(協議)
- 夫婦間で話し合い、親権者を決定する。
- 双方が冷静に話し合える場合、最もスムーズな解決方法です。
2. 調停・審判
- 話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。
- 調停委員が間に入り、親権者の決定について協議します。
- 一定の場合には、審判により親権者について裁判所が判断することもあります(調停において離婚については合意できており、親権者について合意ができていない場合に当事者が裁判所の指定に従う旨を合意できている場合。)
3. 裁判
- 親権争いがさらに激化し、審判で解決しない場合、裁判に進むこともあります。
- 証拠や証人を基にして法的な観点から判断されます。
親権を争う際の判断基準
家庭裁判所が親権者を決定する際、以下の基準が考慮されます。
1. 子どもの福祉の最優先
裁判所は、親の希望ではなく、子どもの利益を最優先に考えます。
具体的な考慮事項
- 子どもの心身の健全な成長
- 教育環境や生活の安定
- 子どもの意思(特に15歳以上の場合)
2. これまでの監護実績
過去にどちらが子どもの世話を主に行っていたかが重視されます。
例
- 食事の準備、学校行事の参加、病院への通院など日常生活の管理。
- 特に、別居後の監護実績が重要視されます。
3. 子どもの年齢
子どもの年齢によって親権者が判断される傾向があります。
一般的な傾向
- 乳幼児(0~3歳)
母親が親権者になることが多い。 - 学童期(4歳~12歳)以降
子どもの意思や父母の監護実績が重視されます。
4. 子どもの意思
15歳以上の子どもは、裁判所で自分の意見を述べることができます(意見聴取)。
注意点
- 子どもの意思が尊重されますが、絶対ではなく、他の要素と総合的に判断されます。
5. 家庭環境
親の生活状況や環境が子どもにとって安定しているかが重要です。
考慮されるポイント
- 経済力
収入が高い方が有利とは限らず、安定した生活を提供できるかが重視されます。 - 居住環境
子どもが安全で快適に暮らせる環境かどうか。 - 家族の支援
祖父母や親族からのサポートが期待できる場合、有利になることがあります。
6. 親の適性
親としての適性や子どもとの関係性も判断基準となります。
適性を問われる行為
- 子どもへの虐待や暴力
- 親の不貞行為や不規則な生活
- 子どもとのコミュニケーションや愛情の深さ
7. 兄弟姉妹の分離回避
兄弟姉妹がいる場合、一緒に育てることが子どもの利益になると判断されるケースが多いです。
親権争いのための準備
親権を争う際には、裁判所に対して有利な状況を証明するための準備が重要です。
1. 監護実績を示す証拠の収集
- 子どもの生活を支えてきた実績を具体的に証明する資料を用意します。
・学校の連絡帳
・病院の診察記録
・家庭内での写真や動画
2. 経済的基盤を示す
- 安定した収入があることを証明するため、給与明細や納税証明書を用意します。
3. 居住環境の写真や資料
- 子どもが快適に過ごせる住環境であることを証明します。
・家の間取り図や写真
・子ども部屋の用意がある場合はその写真
4. 子どもとの関係性のアピール
- 子どもとの交流や関わりを具体的に示す。
・学校行事への参加履歴
・一緒に過ごした休日の記録
親権争いの注意点
1. 感情的な争いを避ける
親権争いが激化すると、子どもに悪影響を及ぼす可能性があります。
2. 無理な主張をしない
裁判所の判断基準を踏まえた現実的な主張が重要です。
3. 子どもの利益を第一に考える
親の感情や利益よりも、子どもの生活や成長を最優先に考える姿勢を示すことが大切です。
弁護士に依頼するメリット
親権争いは感情的な対立になりやすいため、弁護士のサポートが有効です。
1. 適切な証拠収集と整理
弁護士が裁判所に有利な証拠を整理し、効果的に提出します。
2. 冷静な交渉の代行
弁護士が交渉を代行し、感情的な対立を回避します。
3. 法的な主張のサポート
法律に基づき、親権を得るための説得力ある主張を行います。
4. 子どもへの配慮
親権争いが子どもに与える影響を最小限に抑えるためのアドバイスを提供します。
当事務所のサポート内容
当事務所では、親権争いに関する以下のサービスを提供しています。
提供サービス
- 親権争いに関する法律相談:子どもの利益を第一に考えた解決策を提案します。
- 証拠収集と書類作成の支援:親権を得るための具体的な資料や証拠を整備します。
- 調停や審判での代理人業務:家庭裁判所での手続きを全面的にサポートします。
- 子どもへの配慮を考えたアドバイス:子どもの気持ちや生活環境を最優先に考えた解決を目指します。