警察や検察による取り調べは、刑事事件の事実関係を解明するために行われます。取り調べでの供述内容は、事件の処分や裁判に大きな影響を与えるため、慎重に対応することが重要です。また、被疑者(容疑者)には法的な権利が認められており、それを正しく理解し行使することで不当な扱いを防ぐことができます。
本記事では、取り調べにおける被疑者の権利と対策について解説します。
このページの目次
取り調べにおける主な権利
1. 黙秘権
黙秘権は、憲法第38条1項および刑事訴訟法第198条2項に基づく被疑者の権利であり、自らに不利益な供述を拒否することができます。
ポイント
- 全ての質問に答える必要はない
供述を拒否することで、不利な証拠を作らせないことが可能。 - 部分的に行使できる
一部の質問には答え、他の質問には黙秘することも可能。
活用例
- 記憶が曖昧な質問や、不利になる可能性がある場合に行使。
2. 弁護士との接見交通権
逮捕された被疑者は、弁護士と自由に面会(接見)できる権利があります。弁護士との相談は取り調べに対する適切な対策を立てる上で重要です。
ポイント
- 秘密保持が保障される
面会内容は外部に漏れることはありません。 - 接見の妨害は禁止
捜査機関が正当な理由なく面会を妨害することは許されません。
活用例
- 取り調べ前に弁護士と相談し、供述の注意点を確認。
- 取り調べ中に不当な扱いを受けた場合に報告。
3. 供述調書の確認権
取り調べ後に作成される供述調書は、本人の署名・押印がなければ証拠能力を持ちません。調書に署名するかどうかを決めるのは被疑者の自由です。
ポイント
- 内容が正確か確認する
誤りや意図しない内容が記載されている場合は署名を拒否できます。 - 訂正を求める
調書に不備があれば、修正を要求することが可能。
4. 不当な取り調べを拒否する権利
刑事訴訟法第319条に基づき、暴行・脅迫・疲労を強いるような取り調べは違法とされています。
ポイント
- 長時間の取り調べを拒否
長時間にわたる取り調べや、休憩を取らせない行為は違法。 - 暴言・威圧を報告
暴言や脅迫があった場合、弁護士や裁判所に報告します。
取り調べにおける対策
1. 事実を正確に伝える
取り調べでは、事実を正確に供述することが重要です。曖昧な記憶で答えることは避け、記憶が不確かであれば「覚えていない」と答えるべきです。
2. 不利な供述をしない
不利な内容を自ら供述してしまうと、それが証拠となり処分が重くなる可能性があります。分からないことや確信の持てないことには無理に答えず、黙秘権を行使したほうが良い場合もあります。
3. 供述調書を慎重に確認する
供述調書に署名する前に、内容をしっかり確認し、自分の意図と異なる記載がないか確認します。
注意点
- 「あとで修正できる」との説明を受けても、署名する前に訂正を求める。一度完成した調書の内容を後からひっくり返すのは極めて困難です。
- 強要されても、不適切な調書には署名しない。
4. 弁護士に相談する
取り調べ前後に弁護士と相談することで、正しい対応方法を確認できます。
弁護士が提供できるサポート
- 供述内容の確認
供述が事件に与える影響を分析し、今後の取り調べに対する対応について適切な助言を行います。 - 不当な扱いへの対応
捜査機関による違法行為に対して異議を申し立て、法的措置を講じます。
5. 取り調べの内容を記録する
取り調べで不当な扱いを受けた場合、詳細な記録を残すことで後の対処に役立ちます。日弁連の作成した被疑者ノート(取り調べの状況等を記録するノート)を利用することも効果的です。
記録すべき内容
- 取り調べが行われた日時と時間
- 取り調べ官の氏名や肩書き
- 不適切な発言や行動の内容
取り調べにおける注意点
1. 嘘の供述をしない
虚偽の供述を行うと、その矛盾を追及され、不利な立場に立たされる可能性があります。
2. 感情的にならない
取り調べ官の威圧的な態度や挑発に対して冷静に対応し、感情的にならないよう心掛けます。
3. 第三者と情報を共有しない
取り調べ中の内容を家族や知人と共有することは慎重に行いましょう。情報が漏れることで捜査に影響を与える場合があります。
当事務所のサポート内容
当事務所では、取り調べに関する以下のサポートを提供しています。
提供サービス
- 取り調べ対応のアドバイス:取り調べの前に、適切な対応方法を弁護士が助言します。
- 供述調書の確認:調書内容が正確かチェックし、必要に応じて修正を要求します。
- 不当な取り調べへの対応:違法な取り調べが行われた場合、適切な法的措置を講じます。
- 早期釈放の働きかけ:勾留を回避し、早期釈放を目指します。